あなたは何番がお好き?作曲家別交響曲ランキング第3回 ベートーヴェン
2024.09.20 特集 連載
本当に人気の高い交響曲はどれなのか。主要作曲家たちの交響曲について、録音と演奏会の両面からランキングを探る本連載も3回目。今回はいよいよベートーヴェンだ。
さっそく、レコーディング・タイトル数から見てみよう。なにしろ交響曲のチャンピオンに君臨する作曲家だけあって、すさまじい数の録音がリリースされている。いったいナンバーワンは第何番か。心のなかで予想してから、次の段落を読んでほしい。
では、結果を発表します!(ドコドコドコドコ……ドン!)。
第1位は交響曲第3番「英雄」!! な、なんと279タイトルもの録音がリリースされている。さすが、交響曲の歴史を変えた大傑作。指揮者とオーケストラにとって、これほど挑戦意欲をかきたてる作品もあるまい。もっともな結果である……。
と、納得するのはまだ早い。実は第2位の第5番「運命」が277タイトル、第3位の第7番が275タイトルと僅差で続く。この差はカウントするタイミングや数え方次第で前後してしまう程度のものであり、はっきり言って誤差の範疇だ。実質的には第3番「英雄」、第5番「運命」、第7番が横一線で並んでトップを走っているというべきだろう。
このトップ集団を追いかけるのが、「第九」の251タイトル、そして第6番「田園」の228タイトル。以下、第8番、第1番、第4番、第2番と続く。全般に奇数番号の強さは明白だ。
コンサートでの人気ぶりも調べてみた。この11年間の全国のオーケストラの定期演奏会について調査したところ、やはり第1位は交響曲第3番「英雄」で、以下、第7番、第5番「運命」、第6番「田園」、第2番、第4番、第1番、第8番、第9番の順。
ほぼレコーディングと同傾向だが、「第九」が最下位になるのは、調査対象を定期演奏会に絞っているから。どこのオーケストラも年末になれば定期演奏会以外に「第九」を盛んに演奏しているので、これらをカウントすれば第1位になるかもしれない。
日本では「第九」は年末の風物詩として定着しているため、ほかの曲と同列に扱うのは難しい。
ちなみに本誌編集担当のSさんとHさんに好きなベートーヴェンの交響曲3曲を挙げてもらったところ、Sさんは第2番、第3番、第6番、Hさんは第6番、第5番、第9番だという。ワタシは第5番、第6番、第7番。3人がそろって挙げた曲は、唯一、偶数勢で気を吐く第6番「田園」。なぜか気が合った。田舎に到着したときの愉快な気分って最高ですよね~。
ジュピター208号掲載記事(2024年9月11日発行)
プロフィール
音楽ジャーナリスト
飯尾洋一
音楽ジャーナリスト。著書に『マンガで教養 やさしいクラシック』(朝日新聞出版)、『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)他。テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザー、ANA機内プログラム「旅するクラシック」監修。ブログ発信中。