あなたは何番がお好き？作曲家別交響曲ランキング第1回メンデルスゾーン │ 住友生命いずみホール

あなたは何番がお好き？</br>作曲家別交響曲ランキング</br>第1回メンデルスゾーン

あなたは何番がお好き？
作曲家別交響曲ランキング
第1回メンデルスゾーン

2024.05.23 特集連載飯尾洋一

以前、本誌の「モーツァルトピアノ協奏曲の旅～あなたは何番がお好き？」という記事で、作品ごとの録音数と演奏会での上演回数のランキングをご紹介したところ、大反響があった。そこで「二匹目のドジョウ」を臆面もなく狙ったのが本連載だ。主要作曲家たちの交響曲について、録音と演奏会の両方のランキングをとりあげる。連載第1回はメンデルスゾーンの交響曲について。住友生命いずみホールで2025年1月22日よりスタートする山田和樹指揮の「メンデルスゾーン──光の方に」を記念して選んでみた。

メンデルスゾーンの5曲の交響曲を人気で語れば、交響曲第3番「スコットランド」と第4番「イタリア」が双璧であるのはまちがいない。第1番、第2番「賛歌」、第5番「宗教改革」はぐっと引き離されているイメージだ。じゃあ「スコットランド」と「イタリア」、どちらが人気ナンバーワンなのか。そう尋ねられると、簡単には答えられないのでは。そのあたりの漠然としたイメージを、具体的な数字で裏付けるのがこの連載だ。

さっそく、レコーディング数ランキングを見てみよう。第1位はずばり、交響曲第4番「イタリア」！ なんと、Naxos Music Libraryには106タイトルものレコーディングが登録されていた。恐るべきレッドオーシャン。レコード会社の担当者なら新録音のリリースをあきらめそうなほどの過当競争だ。第2位の交響曲第3番「スコットランド」は77タイトル。かなり差がついた。やはり「イタリア」の突き抜けるような明るさがみんな大好きなのだ。対して「スコットランド」にあるのは曇天の魅力。詩情豊かで味わい深いが、「イタリア」ほどキャッチーではない……。

と納得するのは、まだ早い。意外にも上演回数ランキングでは立場が逆転！第1位「スコットランド」の32回に対して、第2位の「イタリア」は15回。ダブルスコアの大差で「スコットランド」が勝利した。ずいぶん傾向が異なるが、上演回数は11年間のプロオケ定期演奏会をカウントしている。最近の国内の傾向があらわれたと見るべきか、定期公演の客層に応じて通好みの結果が出たというべきか。
第3位はどちらのランキングでも交響曲第5番「宗教改革」。これは納得。
ちなみに1曲を選ぶとしたら、本誌編集担当のSさんは第3番「スコットランド」、Hさんは第4番「イタリア」だとか。ワタシはフィナーレのカッコよさにノックアウトされて第5番「宗教改革」推し。好みが分かれた。

さて、あなたのイチオシはどの曲だろうか。「スコットランド」派、「イタリア」派、それとも「宗教改革」派。ひょっとして「賛歌」派？

※2023年3月中旬現在でのNaxos Music Libraryの登録数をカウント。同一音源が複数タイトルでリリースされている場合も一つとしてカウント。

※対象は2012年～2022年の日本オーケストラ連盟に加盟しているオーケストラでの定期演奏会。日本オーケストラ連盟の資料にもとづく。

ジュピター206号掲載記事（2024年5月16日発行）

プロフィール

音楽ジャーナリスト

飯尾洋一

音楽ジャーナリスト。著書に『マンガで教養やさしいクラシック』（朝日新聞出版）、『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる！』（三笠書房）、『クラシック音楽のトリセツ』（SB新書）他。テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザー、ANA機内プログラム「旅するクラシック」監修。ブログ発信中。