
あなたは何番がお好き?作曲家別交響曲ランキング第2回 ブラームス
2024.07.19 特集 連載
本当に人気の高い交響曲はどれなのか。主要作曲家たちの交響曲について、録音と演奏会の両面からランキングを探るのが、本連載だ。連載第2回はブラームスの交響曲について。
ブラームスの4曲の交響曲でどれが最高なのか。これは難問中の難問だ。なぜなら4曲のすべてが最高だから。ぜんぶが最高すぎるほど最高なのだ。だからブラームスの交響曲4曲を好きな順番で並べるというのは、オーケストラ・ファンにとっての鉄板トークだ。あなたなら、どんな順番になるだろうか。ワタシだったら「4─3─2─1」だ。本誌編集担当のSさんは「4─2─3─1」。同じくMさんは「1─2─3─4」だという(曰く、1番は名演が出る確率が高い)。第1番を最初に挙げる人もいれば最後に挙げる人もいる。これはしかたがない。だって、ぜんぶが最高すぎるほど最高なのだから。
では、レコーディング数の多さではどうなっているか。答えは「1─4─2─3」。おお! これは納得。4曲中、もっとも親しみやすいと思われる第1番が1位に来るのはよくわかる。なんと、241タイトルもリリースされている。さすがに超名曲だけあって、録音市場での過当競争ぶりは半端ではない。
もっとも、いちばん少ない第3番でも192タイトルなので、意外と差は少ない。これは多くのレーベルが4曲すべてを録音して交響曲全集に仕立てている事情が反映している。
では、コンサート・シーンにおける人気ぶりはどうなのか。この11年間のオーケストラの定期演奏会を調べてみたところ、結果は「2─1─4─3」。ええーっ。第2番がトップなの!?これは正直、予想外だった。レコーディング数に比べると母数が小さいので、たまたま第2番をたくさん振った指揮者がいたとか、個別の事情に左右された面もあるかもしれないが、それでも11年間の統計となれば相応の重みはある。トップとなった第2番の61回に対して、いちばん少なかったのは第3番の40回。レコーディング数とちがって、こちらは大差がついた。
この順位にはコンサートならではの現実的な考え方があらわれているようにも見える。なにしろ第3番は最後が静かに終わるのだ。コンサートの後半のプログラムには置きづらい。一方、第2番と第1番では壮大なクライマックスが築かれる。客席から盛大なブラボーの声を期待できる。そんな興行上の理由も影響しているのでは?

※2023年5月中旬現在でのNaxos Music Libraryの登録数をカウント。同一音源が複数タイトルでリリースされている場合も一つとしてカウント。

※対象は2012年~2022年の日本オーケストラ連盟に加盟しているオーケストラの定期演奏会。日本オーケストラ連盟の資料にもとづく。
ジュピター207号掲載記事(2024年7月10日発行)
プロフィール
音楽ジャーナリスト
飯尾洋一
音楽ジャーナリスト。著書に『マンガで教養 やさしいクラシック』(朝日新聞出版)、『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)他。テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザー、ANA機内プログラム「旅するクラシック」監修。ブログ発信中。