あなたは何番がお好き?作曲家別交響曲ランキング最終回 モーツァルト

あなたは何番がお好き?作曲家別交響曲ランキング最終回 モーツァルト

2025.01.28 特集 連載

本当に人気の高い交響曲はどれなのか。本連載では主要作曲家たちの交響曲について、録音と演奏会の両面からランキングを探ってきた。最終回となる第5回はモーツァルトで締めたいと思う。

交響曲を第41番まで書いたモーツァルトだが、人気曲は第25番以降に偏っている。ずばり、第25番、第29番、第31番「パリ」、第33番、第34番、第35番「ハフナー」、第36番「リンツ」、第38番「プラハ」、第39番、第40番、第41番「ジュピター」の11曲だ。サッカーでいえば先発イレブンに相当すると言ってもよいだろう。なかでも第39番から第41番までの3曲は「三大交響曲」として名高い。この3曲がスリートップという布陣だ。

さっそくランキングを発表しよう。レコーディング数ランキングの1位は交響曲第40番! 堂々179タイトルでトップを走る。僅差で2位に第41番「ジュピター」、そして3位が第39番。世に言われる「三大交響曲」が順当に上位を占めた。

その後の順位はやや意外性がある。第35番「ハフナー」、第38番「プラハ」と続いて、6位に交響曲第29番が入った。このチャーミングなイ長調交響曲を好む人は少なくないが、「リンツ」や「パリ」といったニックネーム付き交響曲を上回るとは! この曲にニックネームが付いていたら、さらに上位に入っていたかもしれない。

第25番の「小ト短調」は8位。第40番と並ぶ貴重な短調の交響曲であり、ドラマティックな曲想からしても人気が高いのはもっともな話。9位の第33番、10位の第34番も健闘している。両曲ともニックネームがないが、びっくりするほどの傑作だと思う。

一方、演奏会でのランキングは少し傾向が異なる。1位はぶっちぎりで第41番「ジュピター」。そして同点2位で第39番、第40番が続くのだ。これは演奏会ならではの傾向かもしれない。終楽章の壮麗なフーガのおかげで、プログラムのおしまいに置いて会場を沸かせることができるのが「ジュピター」の強み。「ジュピター」はプログラムの前半にも後半にも置ける交響曲だ。一方、4位以降はニックネーム付きの曲がずらりと並ぶ。対照的にレコーディング・ランキングで健闘した第29番や第25番は、こちらではもうひとつ。集客効果を考えると、ニックネームがあったほうが好ましいのだろうか。なにかいい名前、ありませんかね~。

ジュピター210号掲載記事(2025年1月20日発行)

プロフィール

音楽ジャーナリスト

飯尾洋一

音楽ジャーナリスト。著書に『マンガで教養 やさしいクラシック』(朝日新聞出版)、『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)他。テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザー、ANA機内プログラム「旅するクラシック」監修。ブログ発信中。