2024.10.15トピックス

【所蔵楽器のご案内】パイプオルガン

トピックス

パイプオルガンの原型は紀元前のギリシャやエジプトにまでさかのぼる長い歴史をもつ鍵盤楽器です。ルネッサンス期(15世紀の終わりごろ)には現在のパイプオルガンに近い形になったと言われています。
ホールや教会に設置されるパイプオルガンは、一点もの。1台1台すべてが異なる個性を持っています。空間の響きと楽器の響きが重なって唯一無二の音色が生まれます。

《住友生命いずみホールの楽器》
住友生命いずみホールのパイプオルガンは、フランスのオルガン工房ケーニヒ社製です。フランスのオルガンは、北欧やドイツのものに比べて、音色が明るく柔らかいと言われています。加えて、このケーニヒ社はドイツやスイスとの国境のアルザス地方にあり、ドイツの文化も受け継ぐ地域にあります。そのため、フランス作品の演奏にも、ドイツ作品の演奏にも適した楽器といえます。このケーニヒ社製のパイプオルガンの音色を聴くことができるホールは、日本国内では住友生命いずみホールだけです。
高さは10m、幅8.6mあり、ホールの建設とともに設置されました。

Ⓒ樋川智昭

《住友生命いずみホールの楽器の構造について》

パイプ
材質や形が異なるパイプが3623本あります。
木製のパイプや錫(すず)、合金など素材は様々です。
最大のパイプは直径28㎝、長さ6m、重さは100kg。
最小のもので直径3㎜、長さ8㎜(足の部分は15㎜)、重さ20gです。

鍵盤
手で弾く鍵盤は4段あり、足で弾く鍵盤は1段あります。
それぞれの鍵盤に固有のパイプ群が設けられています。
2段、3段、4段と、複数の手鍵盤を同時に弾くしくみも備わっており、異なる音色、音域を一度に鳴らすことができます。

ストップ(音栓)
鍵盤のサイドにある取っ手状のものを「ストップ(音栓)」や「ノブ」と呼びます。このストップを操作することでパイプに風を送ることができます。
「フルート」のストップを引っ張ると栓が開き、風の通り道ができます。その状態で鍵盤を押さえると「フルート」のパイプに風が通り、音が鳴ります。
同時に「トランペット」のストップを引っ張り鍵盤を押すと、「フルート」と「トランペット」の2種類のパイプが同時に鳴ります。
ホールの楽器のストップは46あり、 オルガン奏者はこれらのストップを組み合わせて音色を混ぜ、楽曲に合う音色をつくっていきます。

Ⓒ樋川智昭

ふいご
この巨大な楽器に風を送っているのが「ふいご」です。電気がなかった時代はふいご職人が人力で風を送っていました。ホールのパイプオルガンのふいごは電力を使って操作しています。
ふいごは楽器の内部にいくつも組み込まれています。一番大きなものは演奏台の下部の隠れた部分にあり、そこは送風室・ふいご室と呼ばれています。

 

《レジストレーションについて》
オルガン奏者は演奏する前に大切な「準備」を行います。パイプオルガンは一点もの、コンサートピアノのように、同じような音色が出るわけではありません。音色も音域も楽器ごとに異なります。まずは楽器を知り、楽曲に合わせた音色をつくることから始めます。ストップを組み合わせて音色や音域をブレンドして準備をします。この作業を「レジストレーション」と呼びます。
前述のとおり、ホールのパイプオルガンはストップが46あり、その組み合わせは無限ともいえます。現代のパイプオルガンの多くには「メモリー機能」が搭載されており、組み合わせた音色を記憶させることができます。レジストレーションで準備した音色を演奏中にボタンで呼び出し、演奏を行います。
時代に合わせて楽器のしくみも進化しています。

 

「楽器の王様」「楽器の女王」と呼ばれるパイプオルガンは、そのサイズや音色の大きさだけではなく、歴史、しくみ、演奏方法どれをとってもユニークで世界にひとつしかない楽器と言えるでしょう。