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マリオ・ブルネロ & 川口成彦 デュオ・リサイタル
日時 |
2025年6月27日(金)
開場 18:30 開演 19:00 |
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出演者 | マリオ・ブルネロ(チェロ) 川口成彦(フォルテピアノ) |
演奏曲目 | ベートーヴェン:ヘンデルの「ユダ・マカベア」の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲 ト長調 WoO 45 シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D821 リース:3つのロシアの歌による変奏曲 op.72 メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ 第2番 ニ長調 op.58 |
料金 | S席¥7,000 A席¥5,000 フレンズS席¥6,300 フレンズA席¥4,500 |
発売日 | フレンズ:2025年2月7日(金)10:30 / 一般:2025年2月14日(金)10:30 |
当日券については、主催者にお問合せください。
未知への遭遇―― マリオ・ブルネロと川口成彦の冒険の続き 青澤隆明
マリオ・ブルネロには、ずっと驚かされ続けてきた。それでも、川口成彦とデュオを組むと聞いたときは、不思議な思いがした。
これまでの共演ピアニストですぐ思い浮かぶのは、盟友ルケシーニを除けば、サハロフ、アファナシェフ、サイといった個性も強烈な異才の面々。バロックの領域では、ピッコロ・チェロを含む斬新な取り組みだけでなく、ヴァネツィアの音楽家たちとアンサンブルで聴かせたヴィヴァルディも瑞々しかったが、フォルテピアノとロマン派の作品を弾くのは初めてのはずだ。
しかも、川口成彦は細やかな配慮をみせる感性と知性の持ち主と思われ、大胆果敢な勇者ブルネロとは演奏に求める精神と自由の質が大きく違う。誤解をおそれずに言えば、「野性の冒険者」と「細かいことが気になるタイプ」であるだろう。「水と油」とまでは言わずとも、ふつうに行けば交わることのない道なのではないか、と思われた。
しかし、それが出会ってしまうのが面白いところだ。ともに縁深い紀尾井ホールで昨秋、初共演の機会がもたらされ、メンデルスゾーンの第1番、ショパンのソナタを核に、ベートーヴェンの《魔笛》 変奏曲 op.66、ファニー・メンデルスゾーンのカプリッチョを演奏した。
そこでは、個性や気風の違いを超え、それぞれのアンサンブル能力と適応力の高さが発揮されていった。弱音での精妙な表現が殊に光り、繊細で簡明な表現を巧みに描き出すブルネロには、大人の懐の深さも感じられた。その大胆で即興的な表現にも、川口は機敏かつ明朗によく応じていった。ショパンのラルゴ楽章や、とりわけアンコールで弾いたベートーヴェンとアーンの歌曲の詩情が、両者の出会いの成果をもっとも幸福に結んでいたと思う。
そして、ふたりの物語には続きがあった。来る6月には早くも再共演が叶い、プログラムにはシューベルトのアルペッジョーネ・ソナタ、メンデルスゾーンのソナタ第2番ニ長調に、ベートーヴェンとなかなか聴けないフェルディナント・リースの変奏曲が多彩に組まれている。
川口成彦はこのたびエラールの1840年製フォルテピアノを弾くので、より積極的な表現にも乗り出せるだろう。初顔合わせでみせた手探りの新鮮さの先に、いよいよ意欲的に拓かれるデュオの自由を期待したい。
使用フォルテピアノ:エラール(Erard)
1840年製 CからGまでの80鍵
マリー・アントワネットの楽器係だったエラールは、フランス革命のころ楽器製造拠点をロンドンに移し、イギリス式アクションをさらに発展させた「ダブル・エスケープメント方式」を発明しました。それにより同音連打が可能になり、ピアノ表現の多様さ、テクニックは飛躍的に発展。リストを広告塔として超絶技巧の楽曲で聴衆を熱狂させました。また弦の下から音を止める「アンダー・ダンパー・システム」を考案。若干の余韻を残しながら柔らかく止音することができるため、余計な和音の濁りがなく、ノンレガートで軽やかな表現が可能となりました。
しかし、革新的で複雑な構造はメンテナンスも難しく、アクションにトラブルが発生すると、その修正に時間を要しコンサートに支障をきたすこともありました。
一世を風靡したエラールも、1853年ニューヨークに設立された新しいピアノメーカー「スタインウェイ」に、その座を奪われることになります。
出演者プロフィール
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ⒸGiulio Favotto
マリオ・ブルネロ(チェロ) Mario Brunello, Cello
イタリアのチェロ奏者マリオ・ブルネロは、自由な表現で聴衆を魅了し、ソリストとして、室内楽奏者として、また、イタリアのアルテセラ音楽祭、並びにドロミテ音楽祭の制作・芸術監督を務めるなど、幅広い活動を続けている。1986年、チャイコフスキー国際コンクールでイタリア人として初めて優勝し、一躍脚光を浴びた。この優勝を機に、ムーティ、小澤征爾、パッパーノ、ゲルギエフ、シャイー、コープマン、チョン・ミョンフン、といった偉大な指揮者と共演し、ロンドン響、フィラデルフィア管、スカラ座フィルなど世界一流オーケストラから招かれている。室内楽奏者としても、クレーメル、バシュメット、アルゲリッチ、ツィンマーマン、ファウスト、ポリーニなどと充実した演奏会を重ねている。
使用楽器は、1600年代初頭に製作された「マッジーニ」。一方で、近年は17~18世紀の作曲家たちに親しまれていた4本の弦を持つ「ヴィオロンチェロ・ピッコロ」の再発見を推進しており、2019年秋には、このチェロ・ピッコロを使用して、バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」をリリース。その他の録音も数多く、EGEAレーベルやドイツ・グラモフォンから多彩な作品をリリースしている。 -
ⒸShin Matsumoto
川口成彦(フォルテピアノ) Naruhiko Kawaguchi, Forte piano
1989年盛岡に生まれ、横浜で育つ。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位、ブルージュ国際古楽コンクール最高位。フィレンツェ五月音楽祭や「ショパンと彼のヨーロッパ」(ワルシャワ)、モンテヴェルディ音楽祭(クレモナ)をはじめとした音楽祭に出演。協奏曲では18世紀オーケストラ。{oh!}オルキェストラ・ヒストリチナなどと共演。2023年には神奈川フィルハーモニー管弦楽団の弾き振りも行う。東京藝術大学楽理科卒業後、同大学およびアムステルダム音楽院の古楽科修士課程修了。フォルテピアノを小倉貴久子、リチャード・エガーの各氏に師事。第46回日本ショパン協会賞、第31回日本製鉄音楽賞フレッシュアーティスト賞受賞。またスペイン音楽をこよなく愛し、自主レーベルMUSISによるCD『ゴヤの生きたスペインより』や自主公演「スペイン音楽の森」などのプロジェクトも展開中。
主催 |
ヒラサ・オフィス |
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